その日、警察署内で交通課受付にいたAgLоCu(アグライア・大好き・倶楽部)会員番号56のフィリスは、朝からハイテンションであった。
(きゃーっ! あ、朝から、ア、アグライア先輩を……!!)
 叫びたい思いを、手で口を覆うことで何とかおさえる。そんなフィリスの目は、入り口から規則正しい歩調で入ってきた美女に、釘付けになっていた。だが明らかにその美女がこちらに近づいてきていることがわかると、悪いこともしていないのに何故か急いで受付の内側にしゃがみこんで隠れる。
 署内でも死刑宣告人(エクセキューショナー)≠ニ恐れられ、またフィリスのような一部熱狂的ファンからは、格好良いと言われている美女―――アグライア・フランクは、厳しい無表情をしていた。
「どうしたんだろう……先輩、顔が恐い……」
 それを脳内に思い出して、フィリアは訝しげに呟く。確かに彼女はいつも無表情だが、笑むときは笑むし、ただ心を許していない者の前で、むやみに顔に感情を出さないだけである。実際彼女が激情を露にしているときを、フィリスは見たことがあった。
 そんなことを考えていたら、交通課にいる同僚達が顔を強張らせ、そそくさと遠ざかっていくのにも気付かないままだったフィリスの頭上から、凛とした声が通った。
「……何をしているの? 貴方……」
「!」
 彼女が自分の先輩で、その先輩の出勤場所がここだということを思いっきり失念していたフィリスは、憧れの人物の声に、おそるおそる受付の内側から顔を出した。
「大丈夫?」
「あ、はいっ、大丈夫です先輩!」
 相手の眉を寄せつつの問いに、フィリスは急いで立ち上がると、ビシッと背筋を伸ばす。そんなフィリスの顔を見たアグライアは、名前を思い出せないのかちらりと胸元のネームプレートに視線をやって、ああと小さく頷くともう一度フィリスの顔に戻した。
「フィリス・マルテル……ねぇ、ミズ・マルテル、アイネズはもう来ているかしら?」
「あっミス・アークエットなら―――」
「私ならここよぅ、アグライアっ」
 憧れの人物の問いにはりきって答えようとしたフィリスだったが、それを遮るように耳を叩いた鈴を転がしたような可愛らしい声に、その思いは断念させられてしまう。
 声の主である、黒く長い髪を揺らして階段を下りてきた長身の美女は、その大人びた容貌からはそぐわぬほどの明るさで、ぶんぶんと手を振っていた。その姿は普段でも人の目を十二分に惹くのに、そんな派手な行動までされてしまえば、「私を見てください」と言っているようなものだ。
「アイネズ……もう少し大人しくしていて頂戴」
「あいあいさーっ!」
 最後フィリスに「ありがとう」と告げて背を向けたアグライアは憧れの視線をその背に受けそちらに向かうと、まるで姉のように美女―――アイネズ・アークエットをたしなめる。だが返ってくるのはまるで理解していないような返事と、可愛らしい敬礼である。
 それにもう諦めたように思い溜息を一つだけついて、死刑宣告人(エクセキューショナー)≠ヘアイネズがちゃんとついてくるかを確かめつつ、たった今アイネズが下りてきた階段を更に下りていく。この下に続くのは拘留場―――それも機会人間専門の拘留場だ。
「……それで、あの男の素性はつかめた?」
「少しはつかめたかな、なぁにしろ情報が少ない少ない」
「そんなに?」
 アグライアの訝しげな声に、アイネズは抱えていた青いファイルから一枚の紙片を見て、小さく頷く。
「うん……本人に吐(げろ)させた情報ぐらいしか……」
「どれ……」
 立ち止まって振り返ったアグライアは、それを覗き込んで驚愕の表情を見せた。何しろ項目の殆どが取調べ中(UNKNOWN)≠ニ書いてあったからだ。何度も何度も見直して、それでも同じ結果に思わず相手を責めるような口調になってしまう。
「まさか……機体名も、初起動日もわからないの?」
「本人にも聞こうと思ったんだけど、それよりも早くフリーズしちゃって……」
「……」
 しゅんとなってしまったアイネズに、アグライアは溜息をつきたいのをおさえて、再び階段を降り始めることにした。
 機械人間の取調べ及び拷問では、相手が自らフリーズして情報を喋らないという事態にならないためにも、機械人間の弱点である電流を絶えず、つけた手枷から送り続けている。しかし電力を上げていくと防衛プログラムが始動する機械人間が最近増加し、自動的にOSが切れたり、フリーズしたりすることがあるのだ。今回あの男もそんな類なのだろう。
 しかしこの場合それだけわかったことでも儲けものと考えた方が良い。何しろ相手は自分でも理解しきれない大馬鹿者(グレートスチュピッド)なのだ。この先何があるのかわかったものではない……
「だけど、あの男も苦しんだのでしょう? なら次には吐くわよ」
「それが……全然」
「は?」
 身体は無事でも精神だけが苛まれる―――それは辛いことだというのは、人間の自分でもわかることである。相手の返答が信じられなくて、アグライアはもう一度勢い良く後ろに振り向いた。
「あの軽い顔っていうの? ニコニコが全く崩れないのよぅ。それでいきなりブチン、ってフリーズしちゃって……」
「……あの男らしいわね」
 その様子が見てもいないのにはっきりと頭の中に浮かび、呆れたように呟いたアグライアの目が、不意に険しくなる。はげたら几帳面に何度も塗りなおしていた壁が段々と、手入れされていない様子が伺えるものに変わりつつあったからだ。それは拘留場が近づいている証拠でもある。ここに近づくことが出来るのは死刑宣告人(エクセキューショナー)≠ニ呼ばれるアグライアと、アグライアの許可する人間、また気味悪がり近づこうとしない者を除いた一部上司のみだ。
「どうするの? アグライア……あの男も死刑?」
 古くからの大切な友人の一人であるアイネズは、肩にかかっている自らの髪を肩からのけつつ、一つの命が消えるというのに全く気にしていないような、彼女特有の明るさで尋ねた。彼女なりに心配なのかもしれない。アグライアでも手古摺るあの得体の知れない男が何をするのか―――
「―――当たり前よ」
 即答というには少々遅すぎる時間を経て、死刑宣告人(エクセキューショナー)≠ヘ冷たく答えた。


 所々はげた不恰好な壁に寄りかかり、わずかな窓から漏れる光を浴びて男は座っていた。
 気だるげに壁から突き出た簡易な腰掛に座るその男は、驚くべき程の美貌の持ち主だ。ぼろぼろの囚人服を着ているというのに、その美貌は衰えるばかりか、それすらも美貌に取り込んでいるように思える。黒い長い髪を無造作に流して、俯いている美しい横顔を隠していたが、見える範囲での美しさは、神が与えたように精巧で崩れの無いものだった。
「……ギリシャ彫刻のような、か」
 美貌は顔を上げ、顔と髪にかかる黒髪を背に回した。現れた細められている瞳に、紫紺の明かりが灯っている。それは儚げですらあったが、宙を彷徨う視線の中では確固たる何かが、ひっそりとそびえていた。
「よく麗人の表現で使われていますね……ですが、本当に美しいものなのでしょうか……」
 詩人が歌う調子で、美貌は赤みを帯びている柔らかそうな唇から、言葉を紡いでいく。そしてそっと長い睫毛の影を頬に落として、口角を上げ笑った。
「確かに美しいと形容できるものではあります……けれど、この世で一番美しいのは……この世の美しいものを全て美しいといえる心……違いますか?」
「あちゃぁ……そうきたか、にいちゃん」
 流し目をした美貌に問い掛けられた巨漢は、バシッと強く膝を叩いて笑い始める。それに伴い、周りで薄汚れた床に腰を下ろしていた面々も低く笑い始めた。お世辞にも上品といえる笑い声ではない。
 その様子をまるで皇帝が民を見下ろすよう高い所から見物していた美貌は、悪戯っぽい笑みを落とす。
「ふふ、私を落とそうだなんてまだまだですよ、ミスター」
「顔にゃあ自信があったんだがな……仕方あるめぇ、そう言われちゃ俺はおめぇに手ぇ出せねぇや」
 顔中傷だらけの巨漢が、先程「ギリシャ彫刻のような美貌」という表現で口説こうとした美貌を下から眺め、何処か愛嬌ある笑みを浮かべた。それに皇帝は、無駄一つ無い完璧なる笑みで答えると、再び階下の愚民共から歓声がわく。
 新たな囚人最高の美貌を持つ皇帝=\――クレメントの拘留生活は、何気にこうして楽しめるものになっていた。
 だがそんな楽しみにも不満はあるのか、皇帝は整った眉を寄せると、唇を尖らせる。
「しかしあれですね……皆様、こんな所で不自由いたしませんか? 私なら文句の一つでも申し上げるでしょうに。朝御飯にはライ麦パンと牛乳がかかって間もないシリアル、そして美味しそうな湯気を立てるエスプレッソ。そしてそれを食べさせてくれる美人が一人……最低限度がこれですよ」
 囚人にしてはいささか豪華すぎる欲求をつらつらと並べたクレメントは、ふぅと溜息をつくと投げ出していた足を優雅に組んだ。実際彼の朝食はそのようなものだ。美味しい朝食を用意してくれる運転手、からかえば結構簡単にそれを、やや乱暴だし不定期だが食べさせてくれる美人がいる。それらに慣れてしまっている所為か、このエゴイストはここでもそれを要求している。これを世間一般で我侭と呼ぶ。
 しかしその欲求紛いを聞いた愚民から、それに同調するように不平の声が沸きあがった。
「勿論! こんなの家畜じゃねぇか!」
「俺達がこんなところで自由に暮らせてると思うか!?」
「……思いません」
 それに冷静に返答した皇帝は、憤る愚民共を白すぎる片手で制すと、すっと細めた視線を階下数名に投げやった。それだけで静かになるのだから、この男は本物の皇帝になったら恐ろしいことになるに違いない。
「貴方達は、実際テロを興しになったのですか?」
「まさか! 俺達はんなこたぁしねぇ!」
 クレメントの訝しげな問いに、今度は巨漢の隣にいた痩身のスキンヘッドが声を荒げる。その他の愚民も何か言いたそうな顔をしていたが、全てに共通する感情は「怒り」であることは、どんなに鈍感な輩でも気付くだろう。
「おやおや、ではどうしてこちらに?」
 鈍感の更に上をいくキングオブ鈍感(おばか)は、昨日トリートメントしなかった所為で、少し痛んでしまった前髪を指で弄びつつ、小首を傾げた。自分は婦警に約束をしてしまったから仕方ないとしても、何故この男達は捕まったのだろう。何か他の事をしてかしたのだろうか?
「あの女(アマ)のせいだ! 俺達は何事も起こさず、ただはじっこで生きてきたってのによ!」
「何が十日後死刑だぁ? ふざけんなっ!」
「……」
 思い当たる婦警が頭の中で嫌な笑いを浮かべているのを強制退去させてから、クレメントは膝に肘をつけると頬杖をつく。まだ確定したわけじゃない。
「ちなみに、そのレディのお名前はご存知ですか?」
「覚えてるとも! あの阿婆擦れ!」
「アグライア・フランク!」
「そうだ、あのフランク族の生き残りが!」
「……」
 再び脳内に戻ってきそうなアグライアを一生懸命追い出すことにした。
 そんな脳内格闘中のクレメントに構わず、この囚人達のリーダー的存在らしい巨漢は、機会人間の弱点である電力を流されているのにもかかわらず、勢い良く立ち上がると、皆の怒りを煽り立てるように声を上げた。
「こんな扱いされるんだったら、俺はテロでも興した方がずっとマシだと思うね!」
「そうとも! 俺達機械人間の何が悪いってんだ!」
「俺達は何もしてねぇってのによ!」
「やっぱり人間なんて俺達を作る家畜でしかねぇんだ!」
「そうだそうだ!」
 口笛や囃したてる声が段々と増え、最後には「人間をやっつけろ」という声まで合わさり始める。まるで人間嫌いの宗教の狂信者が集まったような騒ぎを、黙って見ていたクレメントは興味を無くしたかのように視線を逸らすと、小さな窓から空を見上げた。
 こんな動きは今まで見てきたつもりだった。百五十年間、元は一つだったものが分裂して、それらがこうして対立しあった様子も見てきたつもりだったのに―――未だこれらの行動を見ていると、胸の中で存在しないはずの心がズキズキと痛む。自分のエゴを通すための犠牲など厭わないつもりなのに。もしかしたら自分ではなくて、自分の心を植えつけたあの人の心がズキズキと痛んでいるのかもしれない……
 あれからもう、百五十年も……たったのか。
「おいにいちゃん! お前も参加しろ!」
「こっから何としてでも抜け出すぜ!」
 遠くへ彷徨いつつあったクレメントを現実に引き戻したのは、およそ皇帝に対し相応しくない言葉を投げかけてきた愚民共だった。その言葉に力が入らない体を気だるげにそちらに向けて、クレメントは足を組みなおす。
「私は参加いたしませんよ……やるなら、貴方達で好きにやってください」
「んだぁ? にいちゃん、まさか人間の味方する気じゃねぇだろうな?」
 巨漢の訝しげな問いに合わせやめろやめろと合いの手がかかる。こうなってしまってはいくら皇帝といえど手を付けられるものではない。むしろ放棄したい気持ちが上回る。
「私に味方なんてこの世にはおりません……それだけは言っておきましょう」
「じゃああの世にはいるのか?」
 揚げ足をとろうとしたのか、それともただの好奇心か、スキンヘッドが不意に問うてきた。聞かれるとは思っていなかった質問に、暫しぱちくりと目を瞬かせたクレメントは、その後何が楽しいのかクスリと笑みを零す。
「そうですね……間違いなく天国にいらっしゃいますよ、あの方は」
「ほー、もしやにいちゃんのコレか?」
 一気にテロムードからクレメントの過去話に興味を持っていかれた巨漢は、自らの小指をぴんと立てると、にやにやとした笑いを浮かべた。周辺の愚民も一気に顔をにやつかせる。そもそも流れだけで会話を進めている愚民達であったから、会話の中枢をずらすことは容易なのだ。何とかテロから話を逸らすことが出来て、密かにほっと安堵の息を漏らした皇帝は、仕方ないとばかりにコクリと頷いた。それにおーっと歓声がわく。
「綺麗だったか?」
「名前はなんて言う?」
「ス、スリーサイズは?」
「アホっ、んなこた答えられるはず無いだろ」
「そこまでいってるかもしれねぇだろ? お年頃なわけだし」
「まとめて聞かないでくださいよ……私、耳は二つしかないんですから」
 至極当たり前のことを気だるげに言ったクレメントの言葉にも、同じように二つ耳を持つ愚民達はそれを貸さなかった。勝手に聞いて勝手に騒いで勝手且つ下品な妄想を繰り広げている。
「……」
 留まる様子の無いそれを、微苦笑して見下ろしていたクレメントだが、不意に悲しげで翳りのある表情を見せた。それはたった一瞬だけのことだったが、もしこの時脳内の様子を色で表せる機械があったなら、その時の色は―――漆黒。間違いなく暗い闇が広がっていただろう。
「……どうした? にいちゃん」
 これだけからかっても何も言ってこない皇帝を不審に思ったのか、巨漢はガリガリと何日も櫛を通した様子を見せない髪を掻きつつ、訝しげな声と共に見上げてきた。クレメントは一瞬にしてそれをポーカーフェイスの裏へ隠すと、完璧なごまかしという笑みを浮かべてみせる。
「いいえ、何でもありませんよ。お気になさらず」
「だけどよ、にいちゃん。その女が死んだのってのは……もしや、人間にやられたのか?」
「!」
 その笑みを見て何を思ったのか、スキンヘッドはとんでもないことを聞いてきた。せっかく忘れ去られたままいけると思ったのに、再び愚民の顔に憤怒の形相が表れた。
「ならなおさら参加すべきだぜ!」
「彼女の敵を討つんだ!」
「そうだ、ここで立ち上がらなきゃ男じゃねぇ!」
「……」
 もう反論する気すら失せたのか、クレメントは疲れたような表情をポーカーフェイスの裏に隠しもせず、深い溜息をついた。
 まず自分はちゃんとした持論を持っている。それは確かだ。だがそれを語ったり、人に言い聞かせるのは自分の得意分野ではない。むしろ同行者である二人に任せっきりだと自覚している。自覚しているほど性質の悪い輩はいないと諄々と諭されている気がするが、気にしないことにもしている。
 だが今回ばかりは何が彼を突き動かしたのか、静止するような白い手が再び上がった。そしてやってくる静寂。
「貴方達の言い分は良く理解できました……一つ聞きます、貴方達は人間を嫌っておいでで?」
「当たり前だ!」
「では人間を殺したいと思っていますか?」
「確かに俺達は人間が嫌いだが、今まで奴らとの関わりを極力避けてきたんだぜ!」
「なのにこんな報酬はねぇだろうがよ!」
「俺達を殺そうとしてんなら、殺す勢いじゃなきゃ倒せねぇ!」
「……ご意見もごもっともで」
 余計に怒りを煽ってしまったらしく、ピーピーと雛鳥が親から餌を求め鳴くような様子を見せた愚民共に、親鳥は餌を上げる手を宙高く浮かせお預けにさせることにした。それを追い求めるように雛鳥は再度騒ぎ出す。
「大体あいつらは何もしてない(・・・・・・)俺達をこうして壊そうとしてるんだ!」
「このままおめおめ殺されてたまるかってんだ! なら―――」
「―――良くお聞きなさい、人は生まれながらに罪を持っています」
 皇帝は普段人を説得させることを得意としないクレメントの姿を隠して、相手の言葉を遮り静かに語り出した。先程までと同じように喋っているのに、物静かな言い方が余計威圧感を放っている。思わず、愚民どもは息を飲み込んで黙った。逆らったら自分の首が危うい、と本能で察したからだ。
「新しい命が生まれたとき、何処かで古き命が消える。故に最初に人が背負う罪―――それは人殺しです」
「……」
 自らも人殺しをしたと言う皇帝は、一気に静まり返っている愚民共を鋭く細めた紫紺の瞳で見下ろす。
「それだけではありません。私達は日々、食料にするため家畜を殺し、人と関わりあうため虚偽を口にし、生き延びるために罪を重ねる……軽々しく自らに罪がないと言うものではありませんよ、ミスター」
「……おぅ」
 何処か偉そうだが、何者の抗いも許しはしない口調に、代表して巨漢が申し訳なさそうに小さく呟いた。確かに彼の言葉は、人類の魂胆に触れた難しい内容であったが、一理あるからだ。
 巨漢に伴いシュンと憔悴してしまった愚民達に、クレメントは柔らかな笑みを浮かべる。
「さて、ではお聞かせ願いましょうか……お見受けする限りでは第二期機械人間(ツヴァイトドロイド)ですね。貴方達が知る、新地大革命(ブラッディ)での人間と機械の諍いを」
「え? また、どうしてでさぁ……」
「早く」
「……じゃ、俺が話すぞ」
 それを聞いた途端「何故そんなことを聞くんだろう」と不思議そうに顔を見合わせた愚民達の中から、スキンヘッドが挙手をした。改まって胡坐をかきなおすと、真剣な瞳で皇帝を見つめる。
「俺達はにいちゃんの言う通り、新地大革命後(ブラッディーアフター)に生産された第二期機械人間(ツヴァイトドロイド)だ。それもそれから時間がたっちまった後で、俺達を作った同胞達も少なく、圧倒的に人間が優位だった時代だ―――」

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